Gabbeh

大自然とともに生きる。

イラン南部のザクロス山脈、標高2,000~3,000mの山岳地帯。昼夜の寒暖差の激しい大自然の中を羊とともに遊牧しながら300年にもわたってくらしているカシュガイ族の人々。
そんな人々の住まいであるテントに敷いて使われてきたのが、ギャッベです。

地面の上に直に敷き、その上を土足で暮らす。そんな過酷な環境下で永く使われ続けてきたギャッベは、丈夫でいつまでも使い続けることのできるラグと言えます。
また、イランの荒涼とした山岳地帯や砂漠地帯で伝統的に用いられてきたギャッベは、冬や夜の凍てつく寒さからだけでなく、夏や昼間の暑さからも室内を快適に保ってくれます。

ギャッベを織るのは伝統的に女性の仕事でした。

遊牧生活の邪魔になる織り機などは用いず、地面に敷いた状態で一結び、一結び手作業で長い月日をかけて織り込んでいきます。
彼女たちの暮らしの中にある物をモチーフに様々な思いを込められています。

例えば、樹木のモチーフには生命への想いが込められています。これは、荒野に生きる彼らが生命力にあふれる大木を神秘的な存在として敬い畏れをもって対峙してきたからでしょう。
さらに、ヤギや羊のモチーフには繁栄への想いが込められています。これは、遊牧民の彼らにとってヤギや羊といった家畜が財産であり、お金に不自由しない生活の象徴だからです。

伝統を今に伝える。

ギャッベはペルシャ語で「目が粗く毛足の長いラグ」という意味合いだそうです。もともとは、遊牧民族がテントの床に敷いて使う家庭的なラグを指していたそうです。
そのため、市場では中世の頃はあまり相手にされず、目の細かいペルシャ絨毯がもてはやされました。
現代になり、そのアート性と使い心地の良さから脚光を浴びるようになるギャッベですが、その織り方や羊毛の染めの方法は300年前から大きく変わっていません。
草木で染められた羊毛を紡ぎ、織り込んでいく。
風合いの豊かなギャッベの文様や色味は女性たちの手によって受け継がれてきたものなのです。